ポーラX【カラックス4K】
- 公開予定日
- 2026年04月04日(土)
- 作品情報
- 1999年/フランス・ドイツ・日本・スイス/135分
- スタッフ
- 監督:レオス・カラックス
- 出演
- ギョーム・ドパルデュー/カテリーナ・ゴルベワ/カトリーヌ・ドヌーヴ
- 公式サイト
- vhttps://carax4k.com/pola-x/index.html
introduction
『ポンヌフの恋人』から8年の沈黙を破り発表されたカラックス最大の衝撃作
ハーマン・メルヴィルの問題作「ピエール」を映画化
華麗な映像と激越なドラマで多くのファンの心を揺さぶった『ポンヌフの恋人』(91年)から8年、レオス・カラックスは『ポーラX』で復活する。カラックスならではの濃密な映画世界がふたたびスクリーンに炸裂した。
19世紀半ばのアメリカ小説、ハーマン・メルヴィルの「ピエール」(1852)の映画化で、タイトルの『ポーラX』は小説の仏題”Pierre ou les ambiguité” (ピエール、あるいは曖昧なるもの)の頭文字Polaに謎のXをつけたもの。原作「ピエール」は「白鯨」の翌年にメルヴィルが熱狂のうちに書き上げ、その内容から「メルヴィル発狂す」とまで報じられた背徳的で虚無的な長編小説であり、カラックスは18歳の頃に読み「自分のために書かれたかのような奇妙な感覚」を抱いたという。それを泥沼のユーゴ内戦など20世紀末の文脈に置き直し、アクチュアルな話として、また自身の物語として読み直そうとした。主人公ピエールと姉かもしれぬイザベルは、混沌の中で血にまみれた奔流に溺れる双子の孤児のようだ。二人の絶望の深み、そしてその果てにあるあらゆる愛憎としがらみからの超越を、壮絶なロマンティシズムの物語として描いた『ポーラX』は、20世紀の映画シーンの終わりにカラックスが発した魂のメッセージだった。
本作はフランス・ドイツ・日本・スイス合作映画で、『ポンヌフの恋人』の製作費のせいでプロデューサー・出資者が見つからなかった中、日本からはシナリオ・デベロップメント段階から製作を援助、長期にわたってバックアップし続け完成された。日本ではシネマライズ渋谷で1999年10月から19週公開された。
運命に翻弄される愛を、息もつかせぬ映像と音で描き切る
ギヨーム・ドパルデューとカテリーナ・ゴルベワの力演
「この世界はが外れている。なんの悪意か、それを正す役目に生まれるとは。」『ハムレット』第1幕最後の独白(原作『ピエール』第9章でも引用)から墓地を空爆する戦闘機の群れへ、連写銃のようなめくるめくコラージュ映像から始まる『ポーラX』。ピエールは母マリーや婚約者リュシーとともに裕福で満ち足りた田園生活を送るが、やがて「姉」と称して闇の世界から現れたボスニア難民イザベルの抗しがたい魅力に引き寄せられ、全てを捨てて彼女とパリに出る。ピエールとイザベルはお互いの魂を強烈に求め合いながら、螺旋状の暗闘を深く下降してゆく。全速力で疾走し、狂乱し、旋回するバイク。炸裂するパーカッション。二人で「血の河」を下る恐ろしい夢。イザベルは本当の姉なのか。闇が深まるほど疑惑も深まる。運命に翻弄され、絶望へと吸い込まれていく二人の激しく疾走する愛を、カラックスは息もつかせぬエモーショナルな映像と音でラストまで描き切る。
主演のギヨーム・ドパルデュー(1971-2008、ジェラール・ドパルデューの息子)とカテリーナ・ゴルベワ(1966-2011、クレール・ドニ『パリ、18区、夜』94等)が困難な役柄を体当たりで演じ、ピエールが姉と呼ぶ母をカトリーヌ・ドヌーヴが演じ前半と後半で極端な変化を見せる。リュシー役のデルフィーヌ・シュイヨーはカラックスが見出した新人で、その後『不完全なふたり』(05,諏訪敦彦)など映画や舞台で活躍している。カラックスの友人でリトアニア人監督シャルナス・バルタス(ゴルベワと協働作が多く、二人の間に一人娘もいた)もバンドのリーダー役で顔を見せる。
撮影監督は、アメリカに渡ったジャン=イヴ・エスコフィエに代わりエリック・ゴーティエ(1961-)(『そして僕は恋をする』(96、アルノー・デプレシャン)、『愛する者よ、列車に乗れ』(98,パトリス・シェロー)『真実』(19)是枝裕和)が担当。音楽のスコット・ウォーカー(1943-2019)は、独特の低い声で歌う冒頭の「コックファイター」(アルバム「ティルト」収録)にカラックスが惚れ込み、音楽を依頼。劇中のテーマ曲(光のテーマ、牧場のテーマ、暗い森のテーマ、イザベルのテーマ)を作曲した。
なお今回の4Kレストア版は国立映画センター(CNC)の助成によりエクレール・クラシックスがデジタル化とレストアを行なった。