『ラスト、コーション』の現場

『ラスト、コーション』の再上映が桜坂劇場で始まりました。以前にもシネコンの系列で上映され好評を博していたのですが、まだ足りない感じがあったことや、もっと違う形での公開もできないかと、桜坂劇場での再上映が決定したしだいです。また今回の再上映のオープニングイベントとして、映画の出演者を招いてのトークショーが実現。もちろん、香港から呼ぶことはできませんが、日本軍人の役で出演されていた沖縄の芸人、藤木勇人さんが快く出演を引き受けてくれました。藤木さんはNHKの『ちゅらさん』で全国区の有名人となり、今や東京と沖縄を行き来して活動を続けています。映画の現場もいくつか体験していますが、世界的な大監督の現場はもちろん初めて。いったいどんな感慨をもったのか、話がたのしみなトークショーがスタートしました。
藤木さんは普段ステージで一人芝居をするときの琉装で登場。撮影現場の思い出話を披露していましたが、途中からは一人芝居も入って、ステージ上でアン・リー監督の真似も入って臨場感たっぷりの現場を再現。また、藤木さんが撮影した写真のスライドショーも混じって、上海珍道中をおもしろおかしく解説してくださいました。
普段の芸風の関係上、笑いの多い楽しいトークショーになったのは良いのですが、映画の雰囲気と異なる感じがお客様にどうなのかと、主催者側としてはドキドキしていたのですが、笑いの要素をいれながらも、アン・リー監督の演出に対する想いのこもった姿勢が、ひしひしと伝わってくる、良いステージになったと思います。
実は藤木さんの『ラスト、コーション』での出演シーンは本筋とは関係なく、それゆえに簡単に撮影してしまうことができたシーンでもあります。しかし実際は、何度もテークを重ね、藤木さんも交えてシーンを作り上げていく様子が、藤木さんお得意の独り芝居で演じられ、ダイレクトに現場の様子が伝わってきて、非常にユニークなトークとなりました。最終的にその現場で作られた台詞やシーンは、ほとんどカットされているようですが、言われて見直してみると、密かに盛り込まれたエキストラの性格設定やストーリーが、シーンに深みを与えていることは容易に想像できます。「なるほどこうやって、映画に厚みがくわわるのね」ということが、リアルに伝わってきます。また藤木さんが真似る、爪を噛みながら熟考を続ける監督の姿が、想像の中でしっかりとイメージでき、脳裏に焼き付いてしまいました。
あと余談ですが、藤木さんは最初の書類選考で一度落ちたらしく、別の仕事を入れたところで、あらためてオファーが来たらしく、なんども断ったところを、半ば無理やり上海での撮影に参加したそうです。そのため撮影そのものより、翌日の沖縄での仕事に間に合うかどうかだけが心配で、ハラハラしどうしの現場だったようです。そんな強引な話題も、ある意味アン・リーという監督の力をみせられたようで、興味深く感じられました。
『ラスト、コーション』の上映は5月30日まで。


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